厚生労働省は、5月29日、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)について」の通知発出を公表しました。
今般、高齢者医薬品適正使用検討会(座長:印南一路慶応義塾大学総合政策学部教授)において、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」が取りまとめられたことを踏まえ、各都道府県に通知を発出しました。
通知は、各都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部(局)長宛に医政局総務課医療安全推進室長及び医薬・生活衛生局医薬安全対策課長の連名で発せられたものです。
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高齢化の進展に伴い、加齢による生理的な変化や複数の併存疾患を治療するための医薬品の多剤服用等によって、安全性の問題が生じやすい状況があることから、平成29年4月に「高齢者医薬品適正使用検討会」を設置し、高齢者の薬物療法の安全対策を推進するために、安全性確保に必要な事項の調査・検討を進めています。
今般、同検討会において、「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」を取りまとめました。
指針は、
1.ポリファーマシーの概念
2.多剤服用の現状
(1)複数施設で処方されている薬剤を含めた服用薬の全体像
(2)ポロファーマシーの形成
3.薬剤見直しの基本的な考え方及びフローチャート
(1)処方見直しの一般原則
(2)非薬物療法の重要性
(3)専門医の立場からの考え方
(4)一般的な考え方のフロー
(5)減薬・変更する際の注意点
4.多剤服用時に注意する有害事象と診断、処方見直しのきっかけ
5.多剤服用の対策としての高齢者への薬物投与の留意事項
(1)薬剤の特性に合わせた開始用量や投与量調整方法
(2)薬物相互作用とその対応
(3)高齢者で汎用される薬剤の使用と併用の基本的な留意点
(4)その他の疾患横断的に使用する薬剤の使用と併用の基本的な留意点
(5)処方の見直しのタイミングの考え方
6.服薬支援
(1)服用量管理能力の把握
(2)処方の工夫と服薬支援
7.多職種・医療機関及び地域での協働
8.国民的理解の醸成
なお、指針で使用している「薬物有害事象」は、薬剤の使用後に発現する有害な症状又は徴候であって薬剤との因果関係の有無を問わない概念。「ポリファーマシー」は、単に服用する薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服用過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態をいいます。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000208852.html
第7回赤ひげ大賞実施を決定 日本医師会
日本医師会は、「第7回日本医師会赤ひげ大賞」の実施を決定し、5月21日、候補の推薦について発表しました
本賞は、地域の医療現場で長年にわたり、健康を中心に地域住民の生活を支えている医師にスポットを当て、その活躍を顕彰することで、各地の医療環境整備、医療活動の充実に寄与することを目的として創設しました。
受賞者は、産経新聞並びにBSフジの特別番組で紹介する予定です。
対象者は、病を診るだけではなく、地域に根付き、その地域のかかりつけ医として、生命の誕生から看取りまで、様々な場面で住民の疾病予防や健康の保持増進に努めている医師で、日医会員あるいは都道府県医師会会員で現役の医師(現職の日医・都道府県医師会役員を除く)です。
各都道府県医師会長が推薦し、推薦された候補者の中から、日医役員を含む第三者を交えた選考委員会において受賞者5名を決定し表彰を行います。
http://www.med.or.jp/
2型糖尿病患者の薬物療法の負担感と満足度に関する調査 奈良県立医科大学と日本イーライリリーが実施
奈良県立医科大学と日本イーライリリーは、5月22日、「2型糖尿病患者の薬物療法の負担感と満足度に関する調査:DTBQの開発と試験結果」を発表しました。糖尿病治療薬の投与頻度と患者負担の相関関係が浮き彫りになっています。
奈良県立医科大学は、日本イーライリリーの支援により、2型糖尿病患者の薬物療法の負担を測定するためのアンケート調査手法(Diabetes Treatment Burden Questionnaire:DTBQ)を開発し、236名の成人患者を対象に糖尿病薬物療法の負担感と満足度に関する試験を実施しました。この結果は、論文として「Diabetes Therapy」に掲載されました。
近年、日本を含む世界の糖尿病患者数が著しく増加する中、糖尿病患者の血糖コントロール改善のため糖尿病治療も著しい進歩を遂げており、様々な治療薬や薬物療法が登場していますが、依然として血糖コントロールが改善されない糖尿病患者は多数います。
例えば、糖尿病データマネジメント研究会に登録された患者の経口血糖降下薬の併用状況を見ると、治療薬の種類が増えたことから、複数剤を併用する患者が増加している一方で、服用頻度が高ければ高いほど服薬コンプライアンスが悪い状況になっています。そんな中、昨今の糖尿病治療においては多くの治療薬・治療方法の存在を背景に、患者中心のアプローチが重視され、患者の意向や負担を考慮し、患者のライフスタイルに合わせた治療薬・治療方法の選択が望まれています。
現在、糖尿病患者が感じる負担を評価するための質問票として、PAID(Problem Areas in Diabetes Survey)やDDS(Diabetes Distress Scale)が開発されていますが、これらの質問票は、糖尿病罹患に伴う負担を包括的に評価することができる一方、薬物治療に対して患者が感じている負担を抽出して評価することは難しくもあります。そこで今回、薬物療法に対する糖尿病患者の負担を評価するためのアンケート調査手法(DTBQ)を開発し、その検証を行いました。
本試験の解析の結果から、Cronbach’s α係数が0.775~0.885であったことから各質問に対する回答の一貫性が示され、信頼性が示されました。また級内相関係数(ICC)が0.912であったことから、1回目の回答と2回目の回答の一致度が高いことが示され再現性に優れていることが判明しました。
なお、236人の患者のDTBQのトータルスコアを投与方法、投与回数別に見ると、週1回の経口薬の患者負担が最も低く、次いで1日1回の経口薬の服用、次に週1回の注射薬の服用の順となり、1日複数回の経口薬服用は患者負担が高いことが検証により明らかになりました。また、HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、HbA1c値が7.0%以上の患者の方が負担が重い結果となり、HbA1c値が高い患者の方が薬物療法における負担を感じていることが判りました。
合わせて、低血糖の経験のない患者よりも経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者の方が治療に対して負担を感じていることが判りました。投与頻度を見ると、注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスの良い患者は負担のスコアが低く、治療に対する負担が軽度であるという結果になりました。
この結果について、奈良県立医科大学糖尿病学講座石井均教授は、「2型糖尿病治療においては、患者さんの血糖値やHbA1c値、また薬物療法の効果のみならず、患者さんのライフスタイルを背景とした様々な治療負担を考慮して治療法を決定していくことが望まれます。本試験の検証により、糖尿病薬物療法の負担感と満足度に関するDTBQの質問票の信頼性と再現性が確認されました。今後、この結果は患者さんをより理解すること、その上で患者さんに合ったより良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」と述べています。
http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/documents/new_pressrelease_tlc_dtbq_jp_final3.pdf
https://news.lilly.co.jp/down2.php?attach_id=525&access_id=1821
高齢者における白内障手術の認知症機能への影響判明 奈良県立医科大学が発表
奈良県在住の地域高齢住民を対象とした研究で、白内障手術の認知症機能への影響が解りました。奈良県立医科大学が5月1日に発表しました。
奈良県立医科大学眼科学教室(主任教授:緒方奈保子氏)は、奈良県在住の地域高齢住民を対象とした藤原京アイスタディを行い、白内障手術を受けた人では認知機能障害を生じにくいことが2018年2月20日付でPLOS ONE電子版に掲載されたことを公表しました。
藤原京アイスタディは、2007年から奈良県立医科大学疫学・予防医学講座(旧:地域健康医学講座)が奈良県在住の65歳以上の独歩可能な地域住民を対象として行っている「高齢者の生活の質(quality of life:QOL)と生活機能に関する大規模コーホート研究」(通称:藤原京スタディ)で、2012年から追加健診として眼科が参加し、眼科分野と全身因子との関連について藤原京アイスタディとして研究成果を公表しています。過去には2873名の対象者のうち80歳以上の対象者の約40%で白内障手術が施行され視力が改善していることや、視力障害があると認知症のリスクが約2倍高くなることを報告しています。
日本では65歳以上の15%が認知機能障害を生じているとされており、超高齢化が進む日本では、認知機能・視機能障害は医療コスト増大やQOL低下を引き起こし社会的問題となっています。以前に、奈良県立医科大学は視力障害が認知機能へ影響を与えることを報告していますが、白内障手術が認知機能へ与える影響は不明でした。本研究において、白内障手術を受けている患者さんのほうが軽度認知機能障害になりにくいことを明らかにしました。
つまり、白内障手術は視力を改善させるだけでなく、QOLにとって重要な認知機能低下を生じにくくする可能性を示唆している、と言え、白内障手術は患者さん本人のQOLに関係するだけでなく、増大し続ける医療費を防ぐ一つの手段として有用であるかもしれない、としています。
【研究成果の詳細】
藤原京スタディ参加者2764名(平均年齢76.3歳)を対象として、白内障手術既往群668名と非手術群2096名の2群間の認知機能(Mini-Mental State Examination)を評価しました。視力を含む交絡因子を調整した多変量ロジスティック回帰分析で白内障手術群は非手術群と比較して軽度認知機能障害(mild cognitive impairment)が有意に少なかったが、認知症とは有意な関連を認められませんでした。視力と独立して白内障出術が軽度認知機能障害と関連することが明らかになりました。
http://www.naramed-u.ac.jp/
血管炎に関する疾病の呼称の取扱いで通知 厚生労働省
厚生労働省は、4月24日、医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長及び医薬安全対策課長名で、各都道府県衛生主管部(局)長宛に、「医薬品の効能又は効果等における血管炎に関する疾病の呼称の取扱い」について通知を発しました。
血管炎に関する疾病の呼称については、2012年に開催された血管炎に関する国際会議であるChapel Hill Consensus Conference 2012における変更等により、国内でも、新たな呼称が指定難病の病名、診療報酬請求に係る傷病名、医学に関する用語集、診療ガイドライン及び教科書における疾病名等として広く使用され、認知されています。
こうした状況を踏まえ、医薬品の効能又は効果、添付文書等における血管炎に関する疾病の呼称等を変更することとしました。
血管炎に関する呼称について、医薬品の効能又は効果、添付文書等において記載すべき呼称を改めます。
大動脈炎症候群→高安動脈炎
ヴェゲナ肉芽腫症→多発血管炎性肉芽腫症
Churg-Strauss症候群/チャーグ・ストラウス症候群/アレルギー性肉芽腫性血管炎→好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
シェーンライン・ヘノッホ紫斑病/ヘノッホ・シェーンライン紫斑病/アナフィラクトイド紫斑(単純型、シェーンライン型、ヘノッホ型)/アレルギー性紫斑病→IgA血管炎
結節性動脈周囲炎、多発性動脈炎→結節性多発動脈炎、顕微鏡的多発血管炎