新たな専門医の仕組みの導入について要望 日本医師会と医学会が基本診療領域を担う学会に

日本医師会と日本医学会は、6月15日、「新たな専門医の仕組みの導入」について、基本診療領域を担う学会理事長宛てに要望しました。

<新たな専門医の仕組みの導入について>

日本専門医機構に示されている各学会で検討されている現在の新たな専門医の仕組みをこのまま拙速に導入しますと、指導医を含む医師及び研修医が都市部の大学病院等大規模な急性期医療機関に集中し、地域偏在がさらに拡大する懸念が強く、現状でも医師の確保が困難な地域が多いことから、地域医療の現場に大きな混乱をもたらすとの不安が大きくなっています。

多くの関係者が本仕組みへの強い懸念を持ったまま、拙速に導入することによる医療現場の混乱で、最終的に不利益を受けるのは患者、国民であり、地域医療への影響を考えれば、これまでの日本専門医機構の意思決定のプロセスは、透明性、中立性、社会的説明責任が不足していました。

新たな専門医の仕組みの大前提は、地域医療を直接担う医療関係者に止まらず、何よりも医療を受ける患者、国民の理解と協力が得られるかどうかであると思います。現在、日本専門医機構において新たな役員が選出されておりますが、日本専門医機構がこれまで勝ち得なかった国民の信頼を改めて獲得すべく、新たな専門医育成並びに充実した地域医療体制の実現に相応しいものを目指し、今後更に、幅広い関係者の意見が反映できるようにしなければなりません。

このため、各診療領域を担う学会におかれては、現時点においては一度立ち止まっていただき、患者、国民の視点を十分に踏まえた幅広い関係者による新たな検討の場での集中的な精査を待って対応方針を判断していただきますよう、改めてお願いいたします。なお、この新たな検討の場における集中的な精査は、患者、国民の視点を十分に踏まえた幅広い関係者の参加を得て客観的かつ早急に行うことが重要です。

それを踏まえ、日本専門医機構において新たに選出された執行体制と、各学会において十分協議のうえ、問題がないとされた学会は、新たな専門医の仕組みを平成29年度から開始するようお願い申し上げます。

その際、各学会におかれましては、現在検討している新たな専門医の仕組みについて、各学会所属会員に対し、早急に広くご意見をうかがっていただくようあわせてお願い申し上げます。

 

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日本医師会がIT化宣言2016発表

日本医師会は、6月8日の定例記者会見で「日医IT化宣言2016」を発表しました。

<日医IT化宣言2016>

○日本医師会は、安全なネットワークを構築するとともに、個人のプライバシーを守ります。

・マイナンバー制度のインフラを活用した医療等ID制度を確立させる。

・医療等IDを活用して、国民・患者が安心できる地域医療連携を実現する。

・医療機関が安心・安全・安価に地域医療連携に活用できる医療専用ネットワークの構築を目指す。

○日本医師会は、医療の質の向上と安全の確保をITで支えます。

・患者の同意に基づいて収集した医療情報を研究・分析して、医療の質の向上及び患者の安全確保に努める。

○日本医師会は、国民皆保険をITで支えます。

・日本医師会が開発するレセプト処理システムを電子カルテメーカーに提供、普及させることで、保険医療機関経営の原資となる診療報酬を請求するためのインフラ整備を行い、国民皆保険を堅持する。

○日本医師会は、地域医療連携・多職種連携をITで支えます。

・電子カルテのない医療機関でも、電子化された医療情報で地域医療連携を行うことができるようなツールを開発、提供する。

○日本医師会は、電子化された医療情報を電子認証技術で守ります。

・全ての医師に医師資格証を普及させる。

・保健医療福祉分野の電子認証局(HPKI)の事業発展と安定した運用を行う。

・医師資格証のユースケース拡大を図るとともに、身分証明書としての認知度も向上させる。

 

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新たな専門医の仕組みへの懸念を表明 日本医師会と四病団体協議会

日本医師会と四病院団体協議会(日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本精神科病院協会)は、6月7日、合同緊急記者会見を行い、「新たな専門医の仕組みへの懸念」について表明しました。

声明では、「多くの関係者が本制度への強い懸念を持ったまま、拙速に導入することによる医療現場の混乱で、最終的に不利益を受けるのは患者さんであり国民です」「まずは、地域の取り組みを先行すべきであり、新たな専門医の仕組みの導入を、平成29年度から拙速に行うのではなく、地域医療を崩壊させることのないように十分配慮した上で、専門医研修を始める」よう、一般社団法人日本専門医機構及び基本診療領域の担う学会に対して下記の点を要望しています。



1. 患者や国民に不利益を及ぼすような急激な医療提供体制の変更をしないこと。地域医療の崩壊を防ぐことを最優先し、ここは一度立ち止まり、専門医を目指す医師の意見を聞くとともに、地域医療、公衆衛生、地方自治さらには患者・国民の代表による幅広い視点も大幅に加えて早急に検討する場を設け、その検討結果を尊重すること。その際いわゆるプロフェッショナルオートノミー(専門家による自律性)は尊重されるべきである。

2. 検討の場において、現在各診療領域で定められているプログラム整備基準、特に指導医を含む医師及び研修医の偏在の深刻化が起こらないかどうか集中的な精査を早急に行い、その結果、地域医療の観点から懸念が残るとされた診療領域のプログラムは平成29年度からの開始を延期し、現行の学会専門医の仕組みを維持すること。

3. 新たな専門医の仕組みにおけるプログラム作成や地域医療に配慮した病院群の設定等を行うに当たっては、それぞれの地域において都道府県、医師会、大学、病院団体等の関係者が協議、連携し、都道府県の協議会において了解を得ること。

4. 日本専門医機構のガバナンスシステム等、組織の在り方については、医療を受ける患者の視点に立って専門医の仕組みの再構築を目指すという原点に立ち返り、医師の地域的偏在の解消に向けて寄与するなど地域医療に十分配慮すべきであり、そのためにも、地域医療を担う医療関係者や医療を受ける患者の意見が十分に反映され、議論の透明性や説明責任が確保されるようなガバナンス構築する等、日常的な運営の在り方を含め、抜本的に見直すこと。

5. すべての医師が専門医を取得するものではなく、女性医師をはじめとした医師の多様な働き方に十分配慮した仕組みとすること。また、すでに地域医療で活躍している医師が、専門医の取得、更新を行うにあたり、医師の診療体制や地域医療に悪影響が出るような過度な負担はかけないこと。

6. 総合診療専門医、サブスペシャルティの議論はそれぞれ時間をかけてしっかりと行うこと。

 

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消費税率引き上げ再延期で表明 日本医師会

日本医師会は、6月1日、「消費税率の引き上げ再延期」についてプレスリリースを出しました。

内容は次の通りです。

 

本日、安倍内閣総理大臣が記者会見を行い、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げは2019年10月まで2年半再延期する旨が表明されました。

日本医師会はこれまで、消費税増収分を社会保障財源に充てることは「社会保障と税の一体改革」での国民との約束であり、その約束はきちんと守るべきであると繰り返し主張してまいりました。社会保障の財源不足により、地域で必要かつ十分な医療・介護サービスが受けられなくなると、最も不利益を被るのは地域の住民です。

消費税収を充てるべき経費が高齢者3経費から社会保障4経費になっており、現在問題となっている待機児童への対策など、少子化対策の財源もますます必要ですが、限りある財源の中、社会保障における医療費の割合が相対的に縮小しています。

前回の消費税率引き上げ後に消費が落ち込みましたが、今回も消費税率を引き上げれば再び同じ状況になることを危惧されたことは理解できます。しかし、先述のように社会保障の充実は現在の日本にとって必要不可欠であるにも関わらす、今回消費税率の引き上げが再延期されたことは遺憾です。消費税に代わる社会保障財源を別途しっかりと確保すべきです。

団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、地域包括ケアシステムを構築できるよう医療提供体制の改革を進めており、社会保障の削減により、その歩みを止めてはなりません。

安倍政権が掲げる「経済の好循環」を実現し、そこでの税収増を、特に医療や介護の充実にあてるべきです。社会保障と経済は相互作用の関係にあります。子育てや老後に不安を抱える多くの国民に安心を示すことこそ、経済成長を取り戻すための出発点です。

また、今回、消費税率の引き上げは見送られましたが、医療に係る消費税については、平成29年度税制改正に際し、仕入税額控除または還付が可能な税制上の措置を講ずるととともに、必要な財源措置をすべきです。

持続可能な社会保障のために、我々医療側からも、国民皆保険を堅持していくため、生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸などに取り組み、結果として過不足ない医療提供ができるよう、日本医師会は今後も引き続き提言してまいります。

 

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