地域包括ケアに向けたかかりつけ連携手帳提案 日本医師会

日本医師会は、12月27日、「地域包括ケアに向けたかかりつけ連携手帳の提案」を示しました。

日本医師会は、平成26年度から日本歯科医師会、日本薬剤師会と共に、アナログ的に情報を共有するための「かかりつけ連携手帳」を考案し、実証を行ってきました。

「かかりつけ連携手帳」には、患者基本情報を記載する欄があり、医療連携に必要な持病やアレルギー歴、要介護度等の情報を把握できるようになっています。また、オプションページとして、介護予防項目を表したページデザインも用意しました。「お薬手帳」と同様に、医療機関受診時や介護サービスを受ける際に、患者が持ち歩くことを想定しています。

三師会は「健康・医療・介護分野におけるICT化」の連携基盤の構築・環境整備事業推進と並行して、アナログ連携用の「かかりつけ連携手帳」の活用を提唱しています。

ホームページでは提案とともに要件定義を示していますが、項目を限定するものではなく、適用される地域の実情に合わせて、内容等をバージョンアップして、より豊かな地域医療を推進することを望んでいます。

本デザインは三師会に帰するものですが、地域の実情に合わせて「健康・医療・介護分野における情報連携」に携わる方々に活用していただくためにフリー素材として公開しています。

 

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おおさか宣言を採択 平成28年度全国医師会勤務医部会連絡協議会

平成28年度全国医師会勤務医部会連絡協議会は、「2025年問題と勤務医の役割」をメインテーマとして11月26日に大阪市で開催され、特別講演やシンポジウムが行われたほか、「おおさか宣言」が採択されました。

<おおさか宣言>

高齢化の進展に伴い、2025年以降は国民の医療需要が急激に変動する。国民の医療を守るためには、勤務医とかかりつけ医が連携する地域包括ケアの重要性が強調されており、勤務医とかかりつけ医のスムーズな病診連携、更には医療と介護との連携が課題である。

国民から信頼される医療を行うためには、医療の質の向上が不可欠であるが、実施後1年が経過した医療事故調査制度は、いまだ医師や国民に制度内容が十分に理解されているとはいえない。また、良質な医療を提供するためには、勤務医の就労環境の改善が必須であり、今後さらに増える女性医師への支援が求められる。さらに、2018年度から開始が予定される新たな専門医の仕組みでは、医師の偏在が危惧されており、適正な地域医療を確保する観点に配慮した仕組みの構築が急務である。

このような状況をふまえ、2025年に向けた医療提供体制の構築にあたり、勤務医が果たすべき役割を担うため、次のとおり宣言する。

一、2025年を見据えた入院医療と在宅医療における切れ目ない病診連携体制を構築する

一、国民に理解される医療事故調査制度とするために、再発防止を目的とした制度の周知徹底を図り、医療安全を確立する

一、勤務医の就労環境を改善し、女性医師への支援体制をさらに充実させる

一、地域医療に不都合を生じさせない新たな専門医の仕組みの構築を求める

 

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第5回日本医師会赤ひげ大賞受賞者5名を発表 日本医師会

日本医師会は、11月30日、第5回「日本医師会赤ひげ大賞」の受賞者を発表しました。

「日本医師会赤ひげ大賞」は、日本医師会と産経新聞社が主催となり、「地域の医療現場で長年にわたり、健康を中心に地域住民の生活を支えている医師にスポットを当てて顕彰すること」を目的として、ジャパンワクチンの特別協賛、厚生労働省、フジテレビジョン、BSフジの後援の下、平成24年に創設したものです。

対象者は、病を診るだけではなく、地域に根付き、その地域のかかりつけ医として、生命の誕生から看取りまで、さまざまな場面で住民の疾病予防や健康の保持増進に努めている医師で、日本医師会の会員及び都道府県医師会の会員で現役の医師です。各都道府県医師会長が推薦しています。

<第5回「日本医師会赤ひげ大賞」受賞者>

○下田輝一氏(山内診療所院長、秋田県医師会推薦)

○大森英俊氏(大森医院院長、茨城県医師会推薦)

○明石恒浩氏(ザ・ブラフ・メディカル&デンタル・クリニック院長、神奈川県医師会推薦

○大森浩二氏(大森医院院長、京都府医師会推薦)

○瀬戸上健二郎氏(前薩摩川内市下甑手打診療所所長、鹿児島県医師会推薦)

医学研究等における倫理指針の見直しで表明 日本医師会と日本医学会

日本医師会と日本医学会は、11月30日、合同記者会見を開催し、「医学研究等における倫理指針の見直し」について次の通り表明しました。

 

医学研究等における個人情報の取扱い等にかかる倫理指針の見直しに関しましては、現在「医学研究等における個人情報の取扱い等に関する合同会議」において議論が行われているところであります。

近年、急速な情報通信技術の発展などによる、個人や事業者の活動のグローバル化に伴い、日常的に多くのデータが、国を跨って流通するようになりました。そこで、わが国の個人情報の保護のあり方を国際的な枠組みに対応させるべく、平成27年9月に改正個人情報保護法が公布されました。現在、平成29年の施行に向けて各分野で準備が行われており、正にわが国の個人情報保護は新たな時代に突入したと言えますが、今般の指針の見直しはこのようなことを背景に行われるものであります。

マイナンバー制度の議論が始まった当初、医療にマイナンバーを導入することについては、病歴など他人に知られたくない情報まで知られてしまうリスクを伴うことから、日本医師会は日本歯科医師会、日本薬剤師会と共に、三師会として強く反対いたしました。その後の議論の結果、国民が必要としたときに番号を変更できる権利等が担保された医療等分野専用の番号が導入されることとなりました。

このようなマイナンバーに関する議論のなかで、①極めて機微性の高い情報である医療(患者)情報については、要配慮個人情報として細心の注意を払って取扱うべき、②守秘義務が課せられない名簿業者などが情報漏えいした場合の直罰化を導入すべき、③個人情報保護法制のなか、個人情報の保護に関する独立した監督機関を設置し、管理監督を行うべき―という3点を早い時期から厚生労働省並びに内閣官房に対し申し入れしておりました。当時の個人情報保護法のままでは、漏えいが発覚しても、刑法上の守秘義務のないIT事業者等がたとえ故意に個人情報の入ったデータベースを漏えいしても直罰する規定はなく、多くの国民が安心して安全に医療にかかることができないだけでなく、医療に携わる全ての医療者も安心して医療を行うことができない状況になりつつあったことを危惧しておりました。

 

今般の医学研究及び医療に関する行政指針(倫理指針)に関しましては、医療・医学の世界から議論が百出いたしました。特に医学研究等における取扱いの不透明感が否めず、医学研究の現場から強い懸念が挙げられておりました。

医療界、特に日本医師会では、それら医療者・研究者の懸念に配慮することはもちろんですが、国民(患者)が安心して医療にかかることができ、かつ患者の個人情報が漏えいすることなく、医学研究に安全に利活用できるよう議論を重ねて参りました。すなわち、医療分野のIT化が進めなかで、合同会議の場では、医療・医学研究における患者の個人情報保護のあるべき姿について改めて検討を行って参りました。

その結果、今般の議論のなかでは、医療・医学の進歩に向けた学問分野での研究が滞ることなく、その研究成果が国民の健康及び福祉の発展に寄与することを改正個人情報保護法が妨げないという方向性が打ち出されました。このことは、極めて評価できるものであると考えております。

しかしながら、学問研究分野に関しましては、今般の個人情報保護法の改正の趣旨に基づき、「病歴」という究極のプライバシー情報を取り扱うことの責任の重さについて、研究者個々人が認識を新たにして研究を進めて行かなければならないと考えております。

 

個人情報保護法改正に伴う指針の見直しに関する議論に関しては、これで全てが解決するというものではなく、時代の進展に従って様々な対応が求められて参ります。医師の倫理に基づく学問研究の環境整備に対しては、国民(患者)に向けた更なる医療・医学の進歩に直結することから、今回のような議論は大変重要であり、今後も継続的に議論を行う場を設けていただくことを要望いたします。

 

我々、医療・医学に携わる者の代表である日本医師会、日本医学会は、これからも国民の個人情報を守る立場を堅持するとともに、日本の医学研究の発展を促していくことを肝に銘じて、対応していく所存であります。

 

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