日本医師会は、7月23日の定例記者会見で、日本人間ドック学会および健康保険組合連合会が公表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」に対する日本医師会・日本医学会の見解の補足を発表しました。
内容は次の通りです。
本年4月、日本人間ドック学会(人間ドック学会)および健康保険組合連合会(健保連)が公表した「新たな健診の基本検査の基準範囲」に関しては、新聞、テレビをはじめ多くのメディアがとり上げた。残念ながら医療現場に混乱が生じたことに対して、日本医師会・日本医学会としての見解を本年5月21日に示した。その後も、本件に関して、広く正しい理解が得られたとは考えられず、改めて、ここに補足の見解を示す。
通常、検査の「基準値」と言われているものには「基準範囲」と「臨床判断値」があるが、この両者は意味するところが全く違っており、明確に区別すべきものである。
今回、人間ドック学会・健保連が公表したのは「基準範囲」であり、これは、多くの健常人から得られた検査値を多数集めて、その分布の中央95%を含む数値範囲を統計学的に算出したものである。従って、基準範囲は、検査結果を評価する際の物差しとなる数値と考えてよいが、疾病の診断、将来の疾病発症の予測、治療の目標などの目的に使用することは難しい。
一方、各種専門学会等により提唱されている診断基準の中で用いられている検査の基準値は「臨床判断値」である。例えば、日本動脈硬化学会の脂質異常症の診断基準に記載されているものなどがその代表であり、これは、疫学的調査研究に基づいて将来の虚血性心疾患の発症が予測され、予防医学的な対応が要求される検査の閾値、つまり、予防医学的閾値という代表的な臨床判断値である。
以上のように、基準範囲と臨床判断値は全く異なる概念から生まれた数値であり、基準範囲(の上限値・下限値)と臨床判断値は異なるのが当然である。そして、疾病の診断、将来の疾病発症の予測、治療の目標に用いられるべきは臨床判断値である。
各メディアに対しては、このことを十分に理解したうえで適切な報道をお願いするとともに、人間ドック学会・健保連に対しても、この理解を世間に周知していただく努力をお願いしたい。
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