日本医師会は、3月20日、緊急記者会見を開き、「医療事故調査制度の実施に向けての見解」を明らかにしました。
見解は次の通りです。
本年10月の医療事故調査制度の開始に向けて、国民・患者団体、医療界、法曹界などの代表者が真摯な議論を重ねてきた、厚生労働省「医療事故調査制度の施行に係る検討会」の結論がまとめられたことが、本日、厚生労働省より発表されたことを受けて、医療提供者を代表する学術専門団体である日本医師会として、制度の実施に向けた基本的な考え方をお伝えいたします。
このたび厚生労働省検討会の議論がまとめられたことにより、今後、厚生労働省令や解釈通知が具体的に示され、医療事故調査制度の全容が次第に明らかになってくるものと考えます。この医療事故調査制度は、患者・国民の皆さんはもとより、医療提供者にとっても、医療の安全を確保・向上させるために、長年にわたり議論し、待ち望まれたものです。今からおよそ15年ほど前、医療安全に対する国民・患者さんの不信と不安が高まり、また医療提供者の側もさまざまな社会的要因と相まって十分な医療を実施できないという混迷の時代があり、さらにその後、医療事故調査制度の創設についても幾多の議論の変遷を経て、このたび、医療の安全確保に焦点をおいた本制度の実施にさらに一歩近づいたことは、医療提供者を代表する立場として感慨に堪えません。
日本医師会としては、この医療事故調査制度を真に医療の安全と質の向上に資する制度として機能させるよう、全国の都道府県医師会および郡市区医師会はもとより、日本医学会をはじめとする各学会、病院団体、医療職能団体などとともに連携協力し取り組んでいき所存です。
この医療事故調査制度は、事故が発生した医療機関が、院内医療事故調査を如何に確実に行えるかが重要な鍵となりますが、中小規模の医療機関では、すべてを自力で院内調査を行うことは、人的にも経済的にも難しいものと考えられます。そのような場合には制度上、「医療事故調査等支援団体」が必要な支援を行うことになりますが、なかでも、全国の都道府県医師会など、医師会組織の役割が大変重要になるものと認識しております。
従いまして、日本医師会としては、都道府県医師会を中心にすべての医師会組織の総力を結集して、この医療事故調査制度の運用を支えるための支援団体として、活動を進めていくことを計画しております。
具体的には、医療事故が発生した医療機関の初動段階での調査の支援、たとえば解剖が必要であるかどうかの判断に迷った場合に相談を受け助言をすることや、解剖が必要となった場合に解剖を実施できる大学等との連絡調整など、地域のネットワークの核として機能することが期待されます。
より具体的な取り組みの内容は、目下、日本医師会内の医療安全対策委員会において、「医療事故調査制度において医師会が果たすべき役割について」というテーマで昨年来、検討を進めているところでありますので、春先には中間的な報告をまとめて、全国の医師会に伝達する予定でおります。
今更申し述べるまでもなく、医療とは医療提供者と患者・国民との信頼関係のもとに成り立ちうるものであることは、自明であります。しかるに、医療事故については、これまで責任追及、紛争解決という対立的な視点のみが強調されてきた嫌いがありましたが、このたびの医療事故調査制度が実施されることにより、事故の真の発生原因を医学的・科学的に究明し、再発防止に活かすという制度の目的を、医療提供者と患者ご遺族・国民が共有し、対話的な関係を構築することにも資するものと期待しています。
また、そのために、医療界を代表する学術専門団体として、日本医師会はすべての医療提供者と協働して、患者・国民の皆さんの安全な医療、安心な医療を望む声にお応えできるよう、様々な取り組みを重ね、努力していくことをお伝えいたします。
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