日本医師会は、2月13日に緊急記者会見を開き、「国際戦略特区による医学部新設」に反対する声明を発表しました。
日本医師会、日本医学会、全国医学部長病院長会議の連名で、内容は次の通りです。
1. まずは養成費用も含めて医師養成数の議論が必要です。
これから医学部を新設すると、入学生が一人前になるのは十数年後になります。これでは足下の医師不足対策には寄与しません。逆に、将来医師が過剰になる可能性もあり、医学部入学定員はこれに柔軟に対応する必要があります。
医学部6年間で医師の養成に必要な経費は一人当たり約1億円に上ります。これらの財源が国民の負担(税)であることを踏まえても、医学部新設は現実的ではありません。
さらに、現在、若年人口が激減しており、養成費用も含めた医師養成数の議論が必要です。
2.これから医学部新設は医師不足対策にはならず、むしろ医療の質を低下させる懸念があります。
平成20年度から始まった医師確保対策により、現時点までに医学部定員数は1,509名増員されました。この増員数は、約15大学医学部を新設したに等しい規模です。
すでに医学生の学力低下が指摘されているところですが、若年人口に対する医学生のこれ以上の増加は、将来、質の高い安全な医療の提供を困難にするおそれがあります。
3.国際的医療人材の育成は既存医学部・医科大学ですでに着手されています。
現在、国家戦略特区では、グローバルスタンダードに対応した医学部の新設が検討されていますが、すでに既存の医学部・医科大学は、「国際医療人育成」のためのカリキュラムを実行しています。さらに本年中に発足する日本医学教育評価機構(JACME)により、グローバルな医師養成に力点を置く医学教育改革を進めていきます。特区で規制を緩和し、医学部を新設して国際医療人材を育成する必要性は考えられません。
4.地域医療の再生をさまたげるおそれがあります。
医学部新設には、優れた基礎系および臨床系の教員が多数必要です。医学部新設のために全国の大学や地域の基幹病院から有能な医師・教員が引き抜かれれば、地域医療の再生は大きく後れをとり、再び崩壊の危機にさらされるおそれもあります。
既存の大学の施設や人材を有効に活用し、時代の要請に応じた医師養成を図っていくことが望まれます。
以上、日本医師会、日本医学会、全国医学部長病院長会議は、日本の医育、医学、医療界を代表して、国家戦略特区による医学部新設に反対します。
http://www.med.or.jp/