厚生労働省は、12月21日、平成28年度診療報酬改定について発表しました。
1. 診療報酬本体 +0.49%
各科改定率 医科 +0.56%
歯科 +0.61%
調剤 +0.17%
2. 薬価等
① 薬価 ▲1.22%
上記のほか、
・市場拡大再算定による薬価の見直しにより、▲0.19%
・年間販売額が極めて大きい品目に対する市場拡大再算定の特例の実施により、▲0.28%
② 材料価格 ▲0.11%
なお、上記のほか、新規収載された後発医薬品の価格の引下げ、長期収載品の特例的引下げの置き換え率の基準の見直し、いわゆる大型門前薬局等に対する評価の適正化、入院医療において食事として提供される経腸栄養用製品に係る入院時食事療養費等の適正化、医薬品の適正使用等の観点等からの1処方当たりの湿布薬の枚数制限、費用対効果の低下した歯科材料の適正化の措置を講ずる。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000107575.html
全国の医師数は311,205人 平成26年調査の概要発表 厚生労働省
厚生労働省は、12月17日、平成26年(2014年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概要を発表しました。
本調査は、平成26年12月31日現在における全国の届出「医師」311,205人、「歯科医師」103,972人、「薬剤師」288,151人を各々取りまとめたものです。
<医師>
平成26年12月31日現在における全国の届出「医師数」は311,205人で、「男」247,701人(総数の79.6%)、「女」63,504人(同20.4%)となっている。平成26年届出医師数を平成24年(前回)と比べると7,937人、2.6%増加している。また、人口10万対医師数は244.9人で、前回に比べ7.1人増加している。
(1) 施設・業務の種別にみた医師数
主に従事している施設・業務の種別をみると、「医療施設の従事者」は296,845人(総数の95.4%)で、前回に比べ7,995人、2.8%増加している。「介護老人保健施設の従事者」は3,230人(同1.0%)で、前回に比べ41人、1.3%増加し、「医療施設・介護老人保健施設以外の従事者」は8,576人(同2.8%)で49人、0.6%減少している。
(2) 医療施設に従事する医師数
1)性・年齢階級別にみた医師数
医療施設(病院・診療所)に従事する医師を性別にみると、「男」が236,350人で前回に比べ4,180人、1.8%増加し、「女」は60,495人で、3,806人、6.7%増加している。
年齢階級別にみると、「40~49歳」が67,880人(22.9%)と最も多く、次いで「50~59歳」67,815人(22.8%)、「30~39歳」64,942人(21.9%)となっている。
また、男女の構成割合を年齢階級別にみると、すべての年齢階級で「男」の占める割合が多くなっているが、「女」の割合は、年齢階級が低くなるほど高く、「29歳以下」では34.8%となっている。
2)施設の種別にみた医師数
施設の種別にみると、「病院(医育機関附属の病院を除く)」142,655人が最も多く、「診療所」101,884人、「医育機関附属の病院」52,306人となっており、これを年次推移でみても、昭和61年以降「病院(医育機関附属の病院を除く)」が最も多い。
施設の種別に年齢階級をみると、「病院(医育機関附属の病院を除く)」及び「医育機関附属の病院」では「30~39歳」が最も多く、「診療所」では「50~59歳」が最も多い。
平均年齢をみると、「病院(医育機関附属の病院を除く)」では46.2歳、「医育機関附属の病院」38.7歳、「診療所」59.2歳となっている。
平均年齢の年次推移をみると、病院では上昇傾向が続いている。また、診療所では平成22年から引き続き上昇している。
3)診療科別にみた医師数
① 主たる診療科別にみた医師数
従事する主たる診療科別にみると、「内科」が61,317人(20.7%)と最も多く、次いで「整形外科」20,996人(7.1%)、「小児科」16,758人(5.6%)となっている。
主たる診療科の構成割合を性別にみると、「男」は「内科」(21.8%)が最も多く、次いで「整形外科」(8.5%)、「外科」(6.1%)となっており、「女」は「内科」(16.0%)が最も多く、次いで「小児科」(9.5%)、「臨床研修医」(8.3%)となっている。
また、主たる診療科別に平均年齢をみると、「内科」「肛門外科」が57.6歳と最も高く、「臨床研修医」を除くと「救急科」が40.7歳と低くなっている。
主たる診療科を施設の種別にみると、病院では「内科」が21,591人(11.1%)と最も多く、次いで「臨床研修医」15,321人(7.9%)、「整形外科」13,182人(6.8%)となっている。主たる診療科の構成割合を性別にみると、「男」は「内科」、「女」は「臨床研修医」が最も多い。
一方、診療所」では「内科」39,726人(39.0%)が最も多く、次いで「眼科」8,245人(8.1%)、「整形外科」7,814人(7.7%)となっている。主たる診療科の構成割合を性別にみると、男女ともに「内科」が最も多い。
主たる診療科が、「小児科」と「産婦人科」・「産科」及び外科(呼吸器外科、心臓血管外科、乳腺外科、気管食道外科、消化器外科(胃腸外科)、肛門外科、小児外科)の医師数をみると、「小児科」は16,758人となっており、「産婦人科」は10,575人、「産科」は510人(合わせて11,085人)となっている。また、外科は、28,043人となっている。
② 診療科(複数回答)別にみた医師数
従事する診療科別にみると、「内科」が89,234人(30.1%)と最も多く、次いで「消化器内科(胃腸内科)」30,738人(10.4%)、「小児科」29,878人(10.1%)となっている。
また、診療科の割合を施設の種別にみると、「病院」では「内科」(17.5%)が最も多く、次いで「外科」(8.4%)、「臨床研修医」(7.9%)となっており、診療所では「内科」(54.1%)が最も多く、次いで「小児科」(18.8%)、「消化器内科(胃腸内科)」(17.0%)となっている。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/14/index.html
持続可能な社会保障制度の確立を求める決議を採択 国民医療を守るための総決起大会
国民医療推進協議会は、12月9日、「国民医療を守るための総決起大会」を開催し、約2,000名の参加者を得て、国民に将来の安心を約束する持続可能な社会保障制度の確立を求める決議を満場一致で採択しました。
国民医療推進協議会は、平成16年10月、「国民の健康の増進と福祉の向上を図るため、医療・介護・保健および福祉行政の拡充強化をめざし、積極的に諸活動を推進すること」を目的に、日本医師会が各医療関係者団体等に呼びかけ発足しました。40団体が加盟し、これまでの活動としては、国民皆保険制度を守るための活動や禁煙推進運動などを行ってきました。
決議は次の通りです。
<決議>
国民の健康への願いは、「国民皆保険」を実現させ、我が国は世界最高の健康水準を達成した。
今後さらなる超高齢社会を迎えるなかで、我が国が自信を取り戻し、発展をし続けていくためには、社会保障を充実させ、国民に将来の安心を約束していくことが重要である。
よって、本大会参加者全員の総意として、次のとおり要望する。
一、国民に必要かつ充分な医療・介護を提供するための適切な財源の確保
一、国民と医療機関等に不合理な負担を生じさせている医療等に係る消費税問題の抜本的な解決
以上、決議する。
http://www.med.or.jp/
平成28年度診療報酬改定の基本方針を発表 厚生労働省
厚生労働省は、12月7日、「平成28年度診療報酬改定の基本方針」を発表しました。社会保障審議会医療保険部会・医療部会が決定したものです。
改定に当たっての基本認識として、「超高齢社会における医療政策の基本方向」「地域包括ケアシステムと効果的・効率的で質の高い医療提供体制の構築」「経済成長や財政健全化との調和」を示し、改定の基本的視点と具体的方向性として4つの視点を挙げ、「将来を見据えた課題」も示しています。
<改定の基本的視点と具体的方向性>
(1) 地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点
(基本的視点)
○ 医療を受ける患者にとってみれば、急性期、回復期、慢性期などの状態に応じて質の高い医療が適切に受けられるとともに、必要に応じて介護サービスと連携・協働するなど、切れ目ない提供体制が確保されることが重要である。
○ このためには、医療機能の分化・強化、連携を進め、在宅医療・訪問看護などの整備を含め、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を構築するとともに、地域包括ケアシステムを構築していくことが必要である。
(具体的方向性の例)
ア 医療機能に応じた入院医療保評価
イ チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保
ウ 地域包括ケアシステム推進のための取組の強化
エ 質の高い在宅医療・訪問看護の確保
オ 医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化
(2) 患者にとって安心・安全で納得できる効果的・効率的で質が高い医療を実現する視点
(基本的視点)
○ 患者にとって、医療の安心・安全が確保されていることは当然のことであるが、今後の医療技術の進展や疾病構造の変化等を踏まえれば、第三者による評価やアウトカム評価など客観的な評価を進めながら、適切な情報に基づき、患者自身が納得して主体的に医療を選択できるようにすることや、病気を治すだけでなく、「生活の質」を高める「治し、支える医療」を実現することが重要である。
(具体的方向性の例)
ア かかりつけ医の評価、かかりつけ歯科医の評価、かかりつけ薬剤師・薬局の評価
イ 情報通信技術(ICT)を活用した医療連携や医療に関するデータの収集・利活用の推進
ウ 質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進
(3) 重点的な対応が求められる医療分野を充実する視点
(基本的視点)
○ 国民の疾病による死亡の最大の原因となっているがんや心疾患、肺炎、脳卒中に加え、高齢化の進展に伴い今後増加が見込まれる認知症や救急医療など、我が国の医療の中で重点的な対応が求められる分野については、国民の安心・安全を確保する観点から、時々の診療報酬改定においても適切に評価していくことが重要である。
(具体的方向性の例)
ア 緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
イ 「認知症施策推進総合戦略」を踏まえた認知症患者への適切な医療の評価
ウ 地域移行・地域生活支援の充実を含めた質の高い精神医療の評価
エ 難病法の施行を踏まえた難病患者への適切な医療の評価
オ 小児医療、周産期医療の充実、高齢者の増加を踏まえた救急医療の充実
カ 口腔疾患の重症化予防・口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進、
キ かかりつけ薬剤師・薬局による薬学管理や在宅医療等への貢献度による評価・適正化
ク 医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションや医療技術の適切な評価、等
(4) 効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高める視点
(基本的視点)
○ 今後、医療費が増大していくことが見込まれる中で、国民皆保険を維持するためには、制度の持続可能性を高める不断の取組が必要である。医療関係者が共同して、医療サービスの維持・向上と同時に、医療費の効率化・適正化を図ることが求められる。
(具体的方向性の例)
ア 後発医薬品の使用促進・価格適正化、長期収載品の評価の仕組みの検討
イ 退院支援等の取組による在宅復帰の推進
ウ 残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬を減らすための取組など医薬品の適正使用の推進
エ 患者本位の医薬分業を実現するための調剤報酬の見直し
オ 重症化予防の取組の推進
カ 医薬品、医療機器、検査等の適正な評価
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000106248.html
医療経済実態調査結果報告で見解 診療側委員
11月20日に開催された第314回中央社会保険医療協議会総会において、第20回中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する一号委員(支払い側)・二号委員(診療側)の見解が示されましたが、二号委員(診療側:医師・歯科医師・薬剤師を代表する委員)の見解は下記の通りです。
<第20回中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解>
平成27年11月4日に報告された第20回医療経済実態調査の結果から医療機関の経営状態を見ると、一般病院の損益率が▲1.7%から▲3.1%に低下し、一般診療所の損益率も、16.1%から15.5%に低下し、精神科病院の損益率は0.4%から0.7%とほとんど改善しなかった。
民間の一般病院では、医師給与が▲2.1%と低下するなど、給与水準は抑制されているが、給与費率が54.5%から54.9%に上昇している。コ・メディカル等の医療関係職種の増員に見合う収入が手当てされていないのではないかと推察される。医療従事者の確保、処遇改善は経済成長にも資するものであり、十分な手当てが必要である。一般病院では、流動比率(215.8%から198.3%)、自己資本比率(55.9%から46.5%)などの安全性指標も低下している。
民間病院では一般病棟入院基本料7対1の赤字が▲1.3%(前々期▲0.4%)と最も大きくなるという事態になった。必要な人材を確保し、設備投資を行って医療提供体制を維持できる状態にない。
一般病院の病床規模別では、すべての規模で連続赤字となった。特に、大病院で赤字が拡大(300~499床▲2.0%から▲4.2%、500床以上▲1.7%から▲3.3%)しており、前回診療報酬改定で行われた消費税率引き上げに伴う補填が不十分であった医療機関が存在するものと考えられる。小規模な病院も損益率が連続して低い。
精神科病院や療養病床を有する病院では、医薬品等の外部支出を抑制して利益を捻出しているが、職員の処遇改善の余裕はない。
療養病床に関しては、診療報酬と100床当たり入院収益の関係が逆転している(100床当たり入院診療収益は療養病棟入院基本料1で782百万円、入院基本料2で824百万円)。これは他の病床の収益もあるほか、病床稼働率の違いなどが影響しているものと見られる。診療報酬は個別の点数だけでなく、算定要件や地域性なども広く考慮する必要がある。
一般診療所は全体で減収減益(医業収益▲0.2%、介護収益▲0.3%、差額率▲0.6%)である。医療法人では院長給与を▲0.5%引き下げたが、医師(勤務医)給与の上昇(+2.6%)もあり、給与費率が47.9%から48.2%に上昇した。給与費単価だけの問題ではなく、一般診療所でも事務職員等が増加している中、従事者の増員分を賄える収益がないものと推察される。
また、一般診療所では、在宅療養支援診療所の損益率が低く(医療法人・入院診療収益なしで一般診療所8.8%に対し在支診7.4%)、また内科診療所で損益率が低下(入院診療収益なし(個人▲0.7%、医療法人▲0.6%))している。前回改定で在宅医療の適正化を行ったことが、現場で真面目に在宅医療に取り組んでいる診療所にも影響を与えたと言える。
歯科の医療機関の大部分を占める個人歯科診療所における直近2事業年結果については、医業収入の伸びは0.3%で、損益差額はほぼ横ばいに留まっている。医業・介護費用について、内容を見てみると「医薬品費」、「歯科材料費」が増加する一方で、「減価償却費」の減少が見られる。消費税増税と金属代等の価格上昇を設備投資の抑制で補っている状況である。また「給与費」の下げ止まりは人件費の削減が限界に達していると思われ、経営状況はこれまで同様、非常に厳しい状況であることが窺える。
そして、従来から言われている経営の落ち込みについて、全く回復されていないことが分かる。個人歯科診療所における経営状況については、既に経営努力や経費削減努力が明らかに限界に達しており、このことは設備投資面での資金にも影響を与えることが懸念され、安全・安心を前提とした歯科医療提供体制の根幹に関わる喫緊の課題として速やかな対応が求められる。
保険薬局の収支状況については、収益が横ばい(個人立)もしくは低下(法人立)であるのに対し、投与日数の長期化傾向等の影響により、費用の9割を占める医薬品費とその管理に関する給与費が上昇した結果、開設主体の違いにかかわらず損益率は低下した(個人立▲0.4%、法人立▲2.1%)。
また、保険薬局の開設主体の9割以上を占める法人薬局のうち、同一法人の店舗数が「6~19店舗」の施設を除き、いずれの区分においても損益率は低下しており、特に保険薬局のうち、地域密着型の代表とも言える「1店舗」及び「2~5店舗」の施設の損益は、「2~5店舗」で半減、「1店舗」では赤字となり、前回改定において消費税率引き上げに伴う補填が行われたにもかかわらず、調査結果の数値以上に厳しい状況であることがうかがえる。
以上見てきたように、今回の医療経済実態調査結果からは、平成26年度診療報酬改定が実質▲1.26%のマイナス改定であったことや、消費税率引き上げに伴う補填は行われたが、医療機関等は総じて経営悪化となったことが示された。