日本医師会は、5月21日の記者会見で、朝日新聞への抗議文を発表しました。
これは、朝日新聞が「診療報酬不適切請求」について報道したことを受け、5月13日付で同新聞に抗議したもので、内容は次の通りです。
<抗議文>
平成26年5月11日付貴紙朝刊において「診療報酬不適切請求の疑い 厚労省、半数の調査放置」との記事が掲載されています。
その中では、多くの医療機関が不適切請求を行っているかのような誤解を招く表現がなされており、多くの読者を抱える貴紙による今回の記事は国民に誤った認識を与えるもので、到底容認することは出来ません。
改めて、指導に関する日本医師会の見解を以下の通り申し述べ、ここに抗議いたします。
1.社会保険診療に関しては、厚生局側も保険医療機関も保険診療を守るという点では一致しています。しかしながら現在、保険診療は極めて複雑化していることも事実であり、そのような中で、専門的見地からの指導が実施されています。
2.個別指導の対象医療機関は不正請求の疑いが高い医療機関という指摘は当たりません。また、個別指導の対象医療機関のほとんどが類型区分ごとの診療報酬明細書1枚当たりの平均点数が高い順に選定されるものですが、医療が高度化した現在、高点数であることを理由に対象にされることは医療現場の実態にそぐわなくなっています。
例えばインターフェロンや抗がん剤などの高額薬剤を処方した場合や在宅医療に尽力している医療機関は、機械的に対象になってしまう問題があり、日本医師会は対象医療機関の選定について、見直しすべきと主張し続けています。
3.平成19年6月19日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」において「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム」(平成19年5月15日)を推進することとされ、このプログラムでは「個別指導の数を毎年8,000箇所を目指す」とされています。
しかし、個別指導は教育的観点から実施されるものであり。数値目標ありきではないはずである。聖域なき構造改革にもとづき医療費抑制を狙った「基本方針2007」の考え方が継続されていることについて、日本医師会として再検討すべきと主張し続けています。
4.指導・監査の立会は学識経験者として医師会が、会員・非会員の別なく、公平・公正に対応することはもちろん、過去には、行き過ぎた指導により自殺やうつ状態に陥ったりした事実も認められたことから、行政に威圧的な態度など行き過ぎがあれば指摘しています。
立会人は、中立的な立場で、医療の専門家としての知識を用いて、公平・公正な助言をしているものであり、医師会として指導を受ける医療機関の弁護人のような対応はしていません。
従って、「指導に医師会側も同席」との見出しは、故意に医療機関を悪者にする意図が明白であり、容認することは出来ません。
私どもは、貴紙の今回の記事は、医療機関と国民との信頼関係を分断する意図が明白と感じざるを得ません。
新聞社としての社会的意義並びに公的な役割を省みて、事実誤認に基づいた記事を再び掲載することのないよう、強く抗議いたします。
http://www.med.or.jp/