医師の地域・診療科偏在解消で緊急提言 日本医師会・全国医学部長病院長会議

日本医師会・全国医学部長病院長会議は、8月19日、医師偏在解消策検討合同委員会がまとめた「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言-求められているのは医学部新設ではない-」を発表しました。

<趣旨>

2004年度に新医師臨床研修制度が創設され、臨床研修医が大学病院以外の病院を選ぶケースが多くなった。医師が不足した大学病院では、地域の医療機関への医師の派遣に困難を生じるようになった。そのため地域の医療機関では、新たな医師を確保することができず、医師不足が顕在化した。

このような状況を踏まえ、医学部入学定員は、2008年度から暫定的な増員が行われ、2010年度以降は地域枠を中心に引き上げられている。この結果、医学部入学定員は2007年度には7,625人であったが、2015年度には9,134人となり、1,509人増加した。これは、医学部15校の新設にも相当する増員である。このように、医師の絶対数の不足に対して一定の手当がなされており、順次、医学部定員増の効果が現れてくるものと期待される。

こうした中、一部にはさらに医学部を新設し、医師養成数の増加を図るべきだとの意見もあるが、現状の医師不足の本質は、医師の地域・診療科偏在であり、これらの解消こそ喫緊の課題であると考えられる。この課題解決のためには、医師自らが新たな規制をかけられることも受け入れなければならない。また、卒前教育の充実はもちろんのこと、それにつづく卒後教育の充実のためには現行の医師臨床研修制度の抜本的な見直しや適切な専門医制度の設計が必要である。

日本医師会・全国医学部長病院長会議は、現状に対する強い危機感の下、相当の覚悟をもって提言を取りまとめた。

<提言>

日本医師会・全国医学部長病院長会議は、医師の地域・診療科偏在の解消に向けて、大きな柱として、1.医師キャリア支援センター構想、2.出身大学がある地域での臨床研修、3.病院・診療所の管理者要件への医師不足地域での勤務経験の導入、4.地域ごと診療科(基本領域)ごとの医療需要の把握、5.医学部入学定員の削減と新たな医学部設置認可の差し止めを提言する。

 

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