保険外併用療養の拡大で 三師会が共同記者会見

日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、6月13日に共同記者会見を行い、「保険外併用療養の拡大」について、「患者申出療養(仮称)」を容認することを表明しました。

内容は次の通りです。

 

6月10日、安倍内閣総理大臣が慶應義塾大学病院の視察を行った後、患者さんの視点に立った新たな仕組みとして「患者申出療養(仮称)」を創設し、「安全性や有効性が確立すれば、最終的には国民皆保険の下、保険の適用を行っていく」と表明しました。そして、6月13日に規制改革会議から「規制改革に関する第2次答申」が示され、「患者申出療養(仮称)」の創設が提言されました。

新しい医療の提供にあたっては、安全性・有効性を確認することが必要であり、さらに、将来的に保険収載につながるようにすることが大前提です。保険外併用療養費制度は、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険の理念を基本に据えて導入されたものであり、この理念は引き続き遵守されなければなりません。

患者さんがその治療を望んでも、高度かつ先進的な医療であれば、内容を理解することは非常に難しく、医療について情報の非対称性が存在します。医療行為は本質的に不確実性を伴い、たとえ医師が十分な説明をしたとしても、患者さんの自己責任にゆだねることになります。

患者さんがその治療を望んだうえで、医師が困難な病気と闘う患者さんを救うために真剣に医療に取り組まれたにもかかわらず、結果として医療の経過中に不幸な事態となってしまう場合もありえます。したがって、安全性と有効性の確保のために、現行の評価療養と同様に、プロトコルの確認等、一定水準の安全性・有効性の確認は必須であるべきです。

保険外併用療養の運用は進んでおり、現在も十分に機能しています。今般発表された「患者申出療養(仮称)」では、実施時に安全性・有効性をきちんと確認するとともに、作成した実施計画を国において確認し、その結果の報告を求め、安全性・有効性を評価した上で、将来的に保険収載を目指すという点が盛り込まれたことについては、最低限の担保がされたと考えています。

国民の幸福の原点は健康であり、病に苦しむ人がいれば、何としても助けたいというのが医療人の願いであり、私たちの願いは、「必要とする医療が過不足なく受けられる社会づくり」に尽きます。日本医師会も、困難な病気と闘う患者さんの命を救うために、新しい医療を迅速に保険診療として使えるようにすべきという方向性に異論はありません。医療に関する規制は、国民の生命と健康を守るためにあります。今後は厚生労働省の審議会等を経て、健康保険法改正の議論となりますが、患者さんの生命と健康が危険にさらされることのないよう、注視していく所存です。

 

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再生医療に関する広告等への対応で通知 厚労省が都道府県等に

厚生労働省は、6月11日、医政局総務課長名で、各都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部(局)長に対して、「再生医療に関する広告等への対応」について通知しました。

通知の概要は次の通りです。

 

現在自由診療で行われている再生医療については、安全性や有効性が確認されていないものが多くあり、その広告によって不当に誘引された結果、国民に健康被害が生じるおそれもあるため、利用者保護の観点から、先進医療で認められている治療法等を除き、医療法上、広告することはできません(医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針:医療広告ガイドライン)。

しかしながら、本年3月19日に開催された「第6回厚生科学審議会科学技術部会再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会」において、自由診療を行う医療機関が再生医療に関する広告を行っているとの指摘があり、本年4月18日に取りまとめられた報告書では、「医療法上の広告規制の順守を推進することにより、国民が適切な情報を入手できるよう促すことも必要である」とされています。

また、本年5月24日には、再生医療の安全性の確保を図ることなどを目的として、「再生医療等の安全性の確保等に関する基準」が国会へ提出されたところです。

このような中、各自治体において違反広告に対する行政指導等が十分に行われていないとの指摘もなされていることから、貴職におかれましては、国民に対して必要な情報が正確に提供され、適切な医療機関の選択が促されるよう、関係者に対し改めて医療広告ガイドラインについて周知徹底していただくとともに、医療法を遵守していない事例に対しては、適切な対応を講じていただきますようお願いいたします。

また、医療機関のホームページ上にある再生医療に関する表現等に対しても、「医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン)」に従い、行政指導を実施していただきますようお願いいたします。

 

日本医師会が「生命(いのち)を見つめる」フォトコンテスト 読売新聞と共催

日本医師会は、6月5日、読売新聞社と共催する「生命(いのち)を見つめる」フォトコンテストについて発表しました。

日本医師会と読売新聞社は、生命の尊さ、大切さを考えてほしいとの願いを込め、「生命(いのち)を見つめる」フォトコンテストを開催しています。

周囲の生きとし生けるものすべてが被写体で、レンズを通して「生命」を感じた作品を募集しています。

審査委員は田沼武能(日本写真家協会会長)、椎名誠(作家)、ロザンナ(歌手)、織作峰子(写真家)の各氏他。賞は最優秀賞(1点)30万円、日本医師会賞(1点)10万円、審査員特別賞(1点)10万円、読売新聞社賞(1点)10万円、入選(5点)5万円、佳作(20点)図書カード5,000円分。締切は11月14日必着で、発表は2015年2月の読売新聞紙上で行う予定です。

応募・問い合わせ先は、〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞東京本社 事業開発部「フォトコン」係、TEL03-3216-8606 またはHPまで。

 

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「財政健全化に向けた基本的考え方」で見解 日本医師会

日本医師会は、6月4日の定例記者会見で、財政制度等審議会財政制度分科会「財政健全化に向けた基本的な考え方」について、見解を発表しました。

財政制度等審議会財政制度分科会が5月30日にまとめた「財政健全化に向けた基本的な考え方」では、○実効性ある「支出目標」の導入、○診療報酬における薬価の市場実勢の下落による「当然減」の毎年の反映、○特別養護老人ホーム等の内部留保も踏まえた介護報酬の適正化、を指摘し、「断固実現を求める」と記載され、受診時定額負担の導入の検討、市販類似薬品(湿布、漢方薬など)の更なる保険適用除外、保険適用から外す「逆評価療養」、国民健康保険における保険者の都道府県移行、出来高払い制(過剰なサービス供給がもたらされやすい)についても述べられています。

日本医師会では、これらについて「日本医師会の考え方とあるべき姿の方向性」として次の通り示しています。

<医療費の「支出目標」>

医療費の支出目標を設定すると、適切な地域医療を提供する阻害要因となる恐れがある。

現在、2014年度までに病床機能報告制度の運用を開始し、2014年度中に国において地域医療ビジョンのガイドラインを策定し、2015年度からガイドラインを踏まえて都道府県で地域医療ビジョンを策定する方向で進んでいるところである。このスケジュールを拙速に変更すべきでなく、地域の実情を的確に把握し、都道府県行政と地域医師会が一体となって地域医療ビジョンの策定に向けて尽力することが求められる。

<薬価の毎年改定>

診療報酬改定と薬価改定はセットで行うことを前提に薬価算定ルールが設定されているため、薬価の毎年改定は、診療報酬とのバランスを欠くことになる。

また、健康保険法では、診察、薬剤の支給、処置などの療養の給付を受けることができる。すなわち健康保険法において薬剤は診察等と不可分一体であり、その財源を切り分けることは不適当である。

さらに、薬価改定を毎年行うことになれば、医療機関および調剤薬局のレセコン等や、保険者のマスタ更新に毎年膨大な費用が発生する他、医療従事者の研修などによって大きな負担を強いることになる。

なお、日本製薬団体連合会および日本製薬工業協会からも反対意見が出ており、その意見を尊重したい。

<受診時定額負担>

2011年に行われた「社会保障・税一体改革」の議論の際にも受診時定額負担の導入が議論され、患者や医療関係者の強い反対によって導入が見送りとなったことから、受診時定額負担は既に解決済みであると認識している。

そのため、今般の財政審の報告書で再び検討課題としてあがったことは非常に遺憾である。

「受診時定額負担」は、毎回一定額を支払うことになり、受診回数の多い高齢者には大きな負担になる。また、当初は定額100円であっても、いったん導入されれば、その水準が引け上げられていくことは、過去の患者一部負担割合の引き上げの例からも明らかである。また、日本医師会の調査によると、窓口負担が増えた場合に受診回数を減らしたいと思っている患者が約半数いることも明らかになっている。その結果、高齢者や低所得者の方が受診を差し控えざるを得なくなることが懸念される。

<市販類似薬品>

日本医師会は、国民皆保険を堅持するという3条件の第1番目に、「公的な医療給付範囲を将来にわたって維持すること」を掲げている。市販類似薬品の更なる保険適用除外は、公的な医療給付範囲の縮小を招く突破口となるおそれがある。

安易に市販類似薬品を保険適用除外とするのではなく、現場の実態を考慮すべきであると考える。

<保険適用から外す「逆評価療養」>

保険適用の可否については中医協で議論がなされており、保険適用から外されているものもある。「逆評価療養」がどのようなものを想定しているかが不明であるが、本来中医協で議論すべき内容であり、財政審が踏み込むべきではないと考える。

また、費用対効果についても中医協で検討がなされており、そこでの議論を尊重したい。

<国民健康保険における保険者の都道府県移行>

社会保障制度改革国民会議の報告書においても、国民健康保険に係る財政運営の責任を担う主体(保険者)を都道府県とすることが提案されている。日本医師会は公的医療保険制度を将来的に全国一本化すること、その過程で、市町村国保を都道府県単位で統合することを提案している。市町村国保は大変な思いで運営しており、広域化すれば財源は安定するので望ましい。

なお、市民の健康増進については引き続き市町村が担うべきであると考えており、広域化によって、市町村国保が行っている保健事業に対する努力をそぐようなことがないよう留意することが大切である。

<出来高払い制>

日本の対GDP総医療費は9.5%(2010年)で、先進7か国中5位であり、国際的に決して高い水準ではない。

日本の医療は、平等で、患者にとっても自由であるだけでなく、質が高く、しかもそれを既に世界一の高齢化率であるにもかかわらず、先進諸国の中でも低コストで提供している。したがって、出来高払いは、過剰なサービス供給がもたらされやすいものではない。

また、出来高払いであるからこそ、保険審査として第3者である保険者のチェック機能が働いている。

 

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27年度予算概算要求に向けて要望 日本医師会

日本医師会は、6月4日の定例記者会見で、「平成27年度予算概算要求へ向けての要望書」を明らかにしました。

要望書は、

 

本年4月より消費増税が、平成26年度診療報酬改定が実施され、国民との約束である社会保障・税一体改革に基づき、医療提供体制の改革が第一歩を踏み出しました。

日本医師会は社会保障・税一体改革において、それぞれの地域で必要とされる医療を適切に提供していく仕組みが重要であり、「国の方針を都道府県の医療政策にいかに落とし込むかではなく、都道府県や市町村等地域の実態に基づいたものとすべき」と主張してまいりました。かかりつけ医を中心として、地域の身近な通院先、急性期から回復期、慢性期、在宅医療と地域包括ケアによる「切れ目のない医療・介護」を提供することにより、国民にとっても医療提供者にとっても、望ましい医療体制の構築が行われるからです。

一方で、持続可能な社会保障制度となるため、「社会から支えられる側」であった高齢者が、「社会を支える側」になれるよう健康寿命の延伸をしていくことが必要であり、生涯保健事業の体系化が重要となってきます。

国民の幸福の原点は健康であり、病に苦しむ人がいれば、何としても助けたいというのが私たち医療人の願いです。日本医師会は、政策の判断基準として「国民の安全な医療に資する政策か」、「公的医療保険による国民皆保険は堅持できる政策か」の二つに重点を置いて改革を進めていますが、改革には原資が必要です。

社会保障を取り巻く諸問題を円滑に解決し、わが国の医学の進歩発展に応じて、必要とする医療が過不足なく受けられるよう平成27年度予算概算要求に対して、日本医師会は「地域包括ケアの推進」と「生涯保健事業の推進による健康寿命の延伸」の2点を中心に要望いたします。

 

としており、要望事項の重点項目は次の通りです。

 

①    地域包括ケアの推進

新たな基金における消費税増税分(医療介護提供体制改革推進交付金)および一般会計分(地域医療対策支援臨時特例交付金)並びに地方財政措置の充実

②    生涯保健事業の推進による健康寿命の延伸

生涯保健事業の体系化に向けた取組の推進

③    東日本大震災への対応と今後の災害対策

被災地の医療の復興のための基金の積み増し

④    医療安全対策の推進と医療事故調査制度の発足に向けた取り組み

医療従事者に対する医療安全、感染防止教育・研修の充実・強化

⑤    死因究明制度の充実

死体検案研修にかかわる研修体制の充実

⑥    生涯教育の充実・推進

卒然診療参加型臨床実習の充実と国民への周知

⑦    感染症対策の推進

定期予防接種のおたふくかぜ、B型肝炎、ロタウイルスワクチンへの拡大

⑧    精神保健対策の充実

自殺総合対策の推進

⑨    薬務対策の推進

一般用医薬品新販売制度の適正な運用の確保

⑩    消費税増税時の対応

消費税率10%引上げへの対策

 

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